海外で評価された最新研究:FROG AI-OCRが拓く学生剣道史の新展開
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- 7月1日
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更新日:2 日前
武道史研究者・佐藤先生に聞く
「Rise above what we see, to realize what we feel -人間の目を拡張し、感動に満ちた世界を実現しよう-」をビジョンに掲げ、Imaging AI(画像AI)技術を全世界に展開する株式会社モルフォ。
その中でも「FROG AI-OCR」は、モルフォグループでDX推進を担う私たち株式会社モルフォAIソリューションズが開発した最新のAI-OCRです。複雑なレイアウトを持つ日本固有の近代書籍や、論文、図面・表などあらゆる資料に存在する「活字」や「手書き文字」をテキスト化、構造化できるAI-OCRソリューションです。
AI-OCRは歴史的文書を用いた国際的研究や、GLAM(美術館、図書館、公文書館、博物館)におけるデジタルアーカイブや読書バリアフリー法対応、企業における社史編纂で活用されています。
また、近年注目を集めている生成AI技術であるLLM(大規模言語モデル)やRAG(検索拡張生成)などのデータセット(コーパス)作成のツールとしても注目を集めています。
今回で3回目となる新潟医療福祉大学の佐藤先生へのインタビューでは、これまでに引き続き研究やAI-OCRの活用についてお話を伺います。過去のインタビューでは、先生の研究テーマである「剣道史」や、AIを活用した資料分析の取り組みについてご紹介しました。

【第3回インタビュー】
![]() | 佐藤 皓也 様(Sato Koya) 所属:新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科 講師 学位:博士(スポーツ科学)(2020年1月 早稲田大学) 研究分野:スポーツ史/武道史/デジタル人文学/旧制中学・高校 論文:
科研費:
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佐藤先生、今回もどうぞよろしくお願いいたします。
■ 研究の原点と今
――改めて、先生のご研究について簡単にご紹介いただけますか?
佐藤先生:
詳しくはこれまでのインタビュー記事をご覧いただければと思いますが、私はこれまで「剣道」を事例に武道史を探究してきました。現在はその中でも「近代日本の学生剣道史」に注目しています。
歴史研究では、まず古い資料を集め、史実を見極めて解釈を加えていくことが基本です。しかし、資料が残っていない場合は、史実に関連のある人物へのインタビューから考え方や背景を探ることもあります。
私は「質的・量的」両面からのアプローチを用いて、歴史研究の新たな可能性を探っています。
■ 海外誌掲載という大きな成果
――前回のインタビュー以降、研究の進展はありましたか?
佐藤先生:
はい。おかげさまで、アメリカの『Journal of Sport History』という雑誌に論文が掲載されました。
今回の論文では旧制一高(現・東京大学)と旧制三高(現・京都大学)を対象にし、従来の方法ではわかっていなかった学生剣道史における競技性と伝統性の変化を量的に解明しました。
――それは素晴らしい成果ですね! 『Journal of Sport History』はどのような雑誌なのでしょうか?
佐藤先生:
北アメリカスポーツ学会の機関誌で、スポーツ史の分野では由緒ある雑誌です。スポーツの近代化を定義したアレン・グッドマン氏が会長を務めていたこともあります。
実は投稿を迷った時期もあり、国内の先生方には「古典的な雑誌でハードルが高いかもしれない」と助言されました。
――それでも投稿を決意された理由は?
佐藤先生:
「近代日本の学生剣道史」というテーマ自体がユニークであり、デジタル技術を用いた研究方法が国内外でも通用するのではと考えたからです。また、新たな日本の武道研究が海外でどう評価されるのか純粋に知りたかったんです。
――査読通過のお知らせを受けて、どんなお気持ちでしたか?
佐藤先生:
まずは安堵しました(笑)。そして、海外の先生方が新しい技術やアプローチに対してとても柔軟だと感じました。
査読結果でも「革新的な方法論」と評価していただき、自信につながりました。
■ AI-OCRが研究にもたらすインパクト
――ここからは弊社のOCR製品「FROG AI-OCR」についてもお聞かせください。研究の中でどのように役立ちましたか?
佐藤先生:
研究対象となる資料は縦書きの近代書籍が中心で、従来のOCRでは読み取りが難しいものでした。しかし、FROG AI-OCRでは問題なくテキスト化でき、研究のスピードが格段に向上しました。その後、KH Coderを使って計量テキスト分析も行っています。
また、読み順や読取精度も以前より確実に改善されていて、非常に助かっています。
――ありがとうございます。弊社でも手書き文字や図面、新聞記事など、対象資料を広げながら改良を重ねています。生成AIやLLMとの連携も進んでいます。
佐藤先生:
なるほど。最近は生成AIやLLMという言葉もよく耳にしますが、御社でも取り組んでいるのですね。
――はい。モルフォは画像処理に強みを持つ会社ですが、近年ではAIにも取り組んでいます。会社四季報の2025年版のAI特集ページにも掲載されました。徐々にAIの企業としても認識されてきています。国産LLMのための日本語コーパス整備や、各企業におけるマニュアル検索へのRAG活用などにも、弊社のAI-OCRを活用いただいています。
■ 未来の研究とデジタル技術
――今後の研究計画について教えていただけますか?
佐藤先生:
今後は、活字だけでなく、近代以前の古文書のような資料にも対象を広げていきたいと考えています。
同じ分析手法を応用すれば、時代間や組織間の比較研究も可能になるのではと期待しています。
また、これまでいくつかの旧制高校剣道部に注目してきましたが、今後は各運動部の活動についても網羅的に調査・分析を進めていく予定です。
英語論文についても、引き続き海外誌への投稿を積極的に行っていきたいと考えています。
さらに、これまでの研究成果をまとめた書籍の執筆にも着手する予定です。
質的・量的なアプローチとデジタル技術の融合によって、日本の武道文化を歴史的・国際的に発信していけたらと思っています。
――ありがとうございます。弊社でも古文書の手書きOCRに対応する技術開発を進めています。ぜひ今後の研究にもご活用いただければと思います。
佐藤先生:
それは心強いですね。今後の研究の参考にさせていただきます。
■ 最後に
本日は貴重なお話をありがとうございました。
AI-OCR技術によって、日本の武道研究が海外に評価されるきっかけとなったことに、私たちも大きな喜びを感じています。
モルフォAIソリューションズは、AI技術の提供だけでなく、お客様の課題を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案するパートナーでありたいと考えています。
今後とも、先生の研究をご支援できれば幸いです。
佐藤先生、本日はありがとうございました。